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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(あ)3571号 判決

本籍

愛媛県周桑郡田野村字長野一一一八番地

住居

同県新居浜市若水町五四三番地

薬種商

真木富貴夫

明治四五年三月一〇日生

右の者に対する賍物故買被告事件について昭和二八年六月一三日高松高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人佐伯乙一の上告趣意第一点について

憲法三七条一項にいわゆる「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織と構成をもつた裁判所による裁判を意味するものであつて、個々の具体的事件においてたまたま被告人に不利益な裁判がなされても、それが一々同条項に触れる違憲の裁判になるというものでないことは、当裁判所屡次の判例の示すところである。従つて、所論のように、単に原審の事実の認定が不自然であるとか、被告人に対する刑の言渡が共同被告人その他不起訴処分を受けた者に対比して権衡を失しているとかと主張するだけでは、右条項に何等かかわりあいのない事由を以て上告論旨とするものであつて、採用することができない。

弁護人宮崎忠義の上告趣意第一点について

賍物故買罪は、故買者にその物が財産罪によつて領得されたものであることの認識があれば足り、所論のように、それが何人の如何なる犯行によつて得られたかというような本犯の具体的事実までも知る必要はない。されば、原判決は賍物故買罪の判示として欠けるところはないものというべく、違憲の論旨はその前提を欠き、上告適法の理由に当らない。

同第二点について

原判決が被告人の犯罪事実を認定するについては、被告人の自白だけでなく、原判決挙示の他の各証拠をも綜合して認めることができるとしているのであつて、証拠説明として欠けるところはない。所論は、畢竟原審が証拠として採用しなかつた小切手帳控を以て確乎として動かすことのできない証拠であるとする独自の見解に立つての論難に過ぎず、違憲の主張はその前提を欠き上告適法の理由に当らない。

同第三点及び弁護人佐伯乙一の上告趣意第二点について

所論はいずれも量刑不当、事実誤認の主張であつて、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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